先に、ややこしい結論から書きます。
ドイツの水道水は"安全"です。日本より厳しいくらいの基準で管理されていて、汚れているわけでも、不衛生なわけでもありません。

それでも私は、ドイツで水道水を飲んでお腹を壊し、ひどい目に遭いました。

矛盾しているようですが、これは両立します。原因は"きれいかどうか"ではなく、水に溶けているミネラルの量——つまり硬度だからです。ドイツの水道水は日本の4倍以上の硬さがあり、そこに多く含まれるマグネシウムには、腸から水分が吸収されるのを妨げる働きがあります。

この記事では、なぜ"安全な水"でお腹を壊すのかを説明したうえで、現地でどうすればよかったのかを書きます。結論を先に言うと、ミネラルウォーターを買うのが正解です。ただし、その買い方にも罠があります。

「飲めます」と書いてあったので、飲みました

ドイツへ行く前、私も一応は調べていました。
検索して出てくるのは、どのサイトもだいたい同じ答えです。
『ドイツの水道水は飲めます。水質基準は日本より厳しいくらいです』

なるほど、と思いました。ならばわざわざ水を買う必要はありません。
私は普通に蛇口の水を飲みました。ホテルでも、そのまま口をつけていました。

そして、お腹を壊しました。

しかも軽いものではありません。旅行中に自由が利かなくなるレベルで、はっきり"ひどい目に遭った"と言える状態でした。
せっかくの滞在中に、行動をトイレの位置に縛られる感覚は、経験した人にしか分からないと思います。

当時いちばん納得がいかなかったのが、これです。
——安全だと書いてあった水で、なぜこうなるのか。

帰国してから調べて、ようやく腑に落ちました。
あの"飲めます"という説明は、まったく嘘ではなかったのです。ただ、答えている質問が違っていました。

ホテルの洗面台で蛇口から出る水のイメージ
ホテルの洗面台で蛇口から出る水のイメージ

先に言っておくと、ドイツの水道水は汚くありません

この記事を『ドイツの水は不衛生だ』という話だと受け取ってほしくないので、先に書いておきます。

ドイツの水道水は、法律に基づいて厳格に管理されています。
水質基準はむしろ厳しく、現地の人はごく普通に蛇口の水を飲んで生活しています。
衛生上の問題があってお腹を壊したわけではありません。

つまり「飲めますか?」という質問への答えは、正しく"はい"です。
多くのサイトはこの質問に答えているので、内容が間違っているわけではありません。

ただ、旅行者が本当に知りたいのは、そこではないはずです。
『日本から来た自分が飲んで、体は大丈夫なのか?』——この問いには、"安全です"だけでは答えになっていません。

犯人は「硬水」。日本の水道水の4倍以上の硬さがあります

水には硬度という指標があります。カルシウムとマグネシウムがどれだけ溶けているかを表した数字です。
そして日本とドイツでは、ここが決定的に違います。

日本の水道水 ドイツの水道水
硬度の目安 約50mg/L 平均200mg/L以上
分類 軟水 硬水
安全性(法的な水質) 飲用可 飲用可(厳格に管理)
日本人の体への負担 慣れている 慣れていないと下しやすい
※ 硬度は同じドイツ国内でも地域によって差があります。上の数値はあくまで目安です。

日本の水道水はおよそ50mg/Lの軟水です。私たちの体はこれに慣れきっています。
対してドイツは平均200mg/L以上——単純計算で4倍以上の硬さがあります。

なぜマグネシウムでお腹を下すのか

硬水に多く含まれるマグネシウムには、腸管から水分が吸収されるのを妨げる働きがあります。
吸収されなかった水分がそのまま腸に残れば、便がゆるくなります。

実際、マグネシウムは便秘薬の成分としても使われています。
つまり"お腹がゆるくなる"のは異常な反応ではなく、成分から見れば理屈どおりの結果なのです。

「汚れているから」ではなく「慣れていないから」ここが最大のポイントです。原因は水の汚れではなく、日本人の体が軟水に慣れていることのほうにあります。だから現地の人は平気で、旅行者だけがやられる。私が納得できなかった矛盾の答えは、これでした。

ホテルの水なら大丈夫、ではありません

私が油断したのがここです。
『ホテルなら、客に出す水くらい何か処理してあるだろう』と勝手に思っていました。

しかし洗面所やバスルームの蛇口から出てくるのは、当然ながら普通の水道水です。
硬度もそのままなので、体への影響という意味ではまったく同じことになります。

歯みがき・うがい程度なら問題になりにくい口をゆすぐ程度で飲み込む量はごくわずかなので、そこまで神経質になる必要はありません。問題になるのは「喉が渇いたからコップに汲んで飲む」を繰り返した場合です。私がやったのはこれでした。
飲み慣れた整腸薬を持って行く →

※ 現地の薬は成分表示がドイツ語です。使い慣れたものを日本から持って行くのが確実です

対策はシンプル。現地でミネラルウォーターを買うだけです

結論を言えば、これだけで避けられた話でした。
ドイツはスーパーでミネラルウォーターが安く手に入りますし、種類も豊富です。
日本から水を持ち込む必要はまったくありません。

ただし——ここに、もうひとつの落とし穴があります。

ドイツで水を買うと、高確率で炭酸水が出てきます

ドイツではミネラルウォーターといえば炭酸入りが主流です。
何も考えずに棚から取ると、炭酸水を買ってしまう可能性が普通にあります。

炭酸が平気な人ならむしろ得した気分ですが、"お腹を落ち着かせるために水を買った"人にとっては、正直つらい引き当て方です。
ラベルの表記を覚えておけば、確実に避けられます。

ラベルの表記 意味 炭酸が苦手な人は
Still / Naturell
ohne Kohlensäure
炭酸なし これを選ぶ
Medium 微炭酸 やや泡が出る
mit Kohlensäure
Sprudel / Klassisch
炭酸あり これを避ける
Natürliches 「天然の」という意味 炭酸なしの意味ではない
「Natürliches」に引っかからないことNatürliches は「天然の」という意味であって、炭酸なしを表す言葉ではありません。"ナチュラル=無炭酸"だと早合点すると、炭酸水を掴みます。炭酸なしを確実に選ぶなら Still / Naturell / ohne Kohlensäure の3つで判断してください。
🛒

スーパーで買うのが一番安い

駅や観光地の売店より明確に安い。滞在初日にまとめて買っておくのが楽。

🔵

青いラベルは目印になる

炭酸なしに青系を使う銘柄が多い。ただし絶対ではないので必ず文字を確認する。

🍽

レストランでも聞かれる

"mit oder ohne?"(炭酸あり/なし)と確認されるので ohne と答えればよい。

それでもやられてしまったときの話

対策を知っていても、旅先で体調を崩すことはあります。
水が原因とは限りませんし、食事や気候の変化が重なることもあります。

そして海外で困るのが、いざ病院にかかったときの費用です。
日本の健康保険は使えないので、日本の感覚とはまるで違う金額を請求されることがあります。

『腹痛くらいで病院には行かないだろう』と思うかもしれません。
でも、ホテルから動けなくなるほど脱水が進めば、話は変わります。
そうなったときに手元に補償があるかどうかで、旅の終わり方はまったく違ってきます。

現地で病院にかかる前に

体調を崩したときに効いてくるのは、結局これでした

海外で医療機関にかかると、日本の感覚では考えられない金額を請求されることがあります。「たかが腹痛」でも、ホテルで動けなくなって現地で受診すれば費用は跳ね上がります。旅行の総額に対して保険の負担はごくわずかです。出発前の数分で、この不安だけは消しておけます。

▶ 海外旅行保険を確認する
※ クレジットカードに付帯している場合もあります。まずは手持ちのカードの補償内容を確認してみてください

正直に書く。全員がお腹を壊すわけではありません

念のため書いておきますが、硬水で必ず体調を崩すわけではありません。
平気な人はまったく平気ですし、現地に住んで慣れてしまう人もたくさんいます。
私の場合はたまたま強く出た、という可能性も十分あります。

💧

少量ずつ試すなら影響は小さい

いきなり大量に飲むのが一番危ない。不安なら最初は口をつける程度に。

🧒

子ども・高齢者は慎重に

脱水の影響が大きく出やすい年齢層は、最初からミネラルウォーターが無難。

💊

常備薬は日本から

使い慣れたものを持って行くほうが確実。現地の薬は表示がドイツ語。

この記事は医療的な助言ではありません体質や持病によって影響は変わります。不安のある方、持病をお持ちの方は、渡航前に医師へご相談ください。症状が重い・長引く場合は、我慢せず現地の医療機関を受診してください。

総評:知っていれば、水を買うだけで済んだ話でした

私がドイツでお腹を壊したのは、水が汚かったからではありません。
『飲めます』という情報を、『自分が飲んでも平気です』と読み替えてしまったからです。
この2つは、まったく別のことでした。

対策にかかるコストは、スーパーで水を買う数百円ぶんだけです。
それで旅行が台無しになる可能性を消せるなら、迷う理由はどこにもありません。

これからドイツへ行く人が、同じ数日間を失わずに済むように、この記事を書きました。

現地で病院にかかる前に

体調を崩したときに効いてくるのは、結局これでした

海外で医療機関にかかると、日本の感覚では考えられない金額を請求されることがあります。「たかが腹痛」でも、ホテルで動けなくなって現地で受診すれば費用は跳ね上がります。旅行の総額に対して保険の負担はごくわずかです。出発前の数分で、この不安だけは消しておけます。

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